キミが犯罪者にならないために

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裁判のやり直しを求める「再審」について説明します

クレマチス(鉄線)

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再審は「利益再審」のみ

現在の再審制度は、憲法39条 (一事不再理・二重の危険の禁止)の趣旨を承け、旧刑事訴訟法 で認められていた「不利益再審」 (被告人に不利益な再審)を廃止し、「利益再審」 (被告人に有利な再審)だけを認めています。

ということは、現在の再審制度は「無辜の救済」を基本的な理念とし、誤った裁判から被告人を救済することを目的としていることになります。

クレマチス(鉄線)

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再審は前半と後半の2つの手続からなる

再審は、前半の再審請求審と後半の再審公判という2 つの段階に分けられています。

前半の再審請求審は 、裁判のやり直しを求めることが適切かどうかを審査するもので、再審の扉に当たります。この扉が堅牢で重いため、再審公判の部屋に入ることがなかなかできないのが日本の現状です。

前半の再審請求審において、裁判のやり直しを求めることが適当と認められ、再審開始決定がなされると、「再審の扉が開かれた」ということで、いよいよ裁判のやり直しそのものである再審公判が開かれることになります。

「疑わしきは被告人利益に」の鉄則

再審制度は無辜の救済、誤判からの救済を基本理念としており、当然ですが、「疑わしきは被告人の利益に」の原則が適用されます。

最高裁判所もこれを認め、 「刑訴法435条6号にいう『無罪を言い渡すべき明らかな証拠』とは、再審開始のため 確定判決における事実認定につき合理的な疑いを生ぜしめれば足りるという意味において、『疑わしいときは被告人の利益に』という刑事裁判における鉄則が適用されるものと解すべきである」 (白鳥事件・最決昭和50年05月20日刑集29巻5号177頁)と判示しています。

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再審請求は再審を求める扉を開けろと求めるもの

再審の前半である再審請求審は、裁判のやり直しを求めることに理由があるか、つまり請求人の再審請求に適切な再審理由があるかを裁判所が審査する段階です。これは再審の事前審査であり、再審の扉と呼ばれるのはそのためです。

再審開始決定  再審を認める適切な理由が存在すると判断されると、再審開始の決定が出され、その決定が確定すると、後半の再審公判が開かれ 、裁判のやり直しがなされます。

🌑再審請求棄却決定  これに対し、再審を認める適切な理由が存在しないと判断されると、再審請求の棄却決定が出され、その決定が確定すると、裁判のやり直しはしないということで、再審公判は開かれません。

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多くは「無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見」が再審請求の理由

再審理由 (再審が認められるための理由)は、刑事訴訟法435条に7つ規定されています。

しかし、これらの再審理由はいずれも限定的で、それが認められるための要件も厳格です。

そのため、再審の扉は堅くて重く、なかなか開かれません。論語の「過ちては改むるに憚ることなかれ」は日本の刑事裁判には当てはまらないようです。

みなさんも、再審で無罪が言い渡された死刑事件の免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件や、遺族の再審請求が認められた徳島ラジオ商事件、最近では大塚事件(再審請求棄却)、袴田事件(再審開始)などをご存じだと思います。

その多くは、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したとき」(刑事訴訟法435条6 号)を理由とするもので、これが最もよく使われる再審理由です。

クレマチス(鉄線)

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証拠には新規性と明白性が必要

「明らかな証拠をあらたに発見したとき」 (刑事訴訟法435条6号)という再審理由には、新たに提出する証拠に新規性明白性が必要だということを意味します

新規性  再審請求で新たに提出する証拠は、まず「あらたに発見した」という新規性が必要です。既に前から存在していた証 拠でも、それをあらたに発見したのであれば新規性が認められます。

また、被害者の肝臓組織標本などの同じ証拠について最新鋭の科学機器であらためて科学鑑定が行われ、その結果が以前なされた鑑定の結果と同じであっても、鑑定方法が異なるので新規性が認められます。

明白性  再審請求で新たに提出する証拠は、さらに「明らかな証拠」という明白性も必要です。明白性の意味に ついては議論があります。

最高裁は総合評価説に立っています。白鳥事件・最高裁決定(最決昭和50年05 月20日刑集29巻5号177頁)は、刑事訴訟法「435条6号にいう『無罪を言い渡すべき明らかな証拠』とは、確定判決における事実認定につき合理的な疑いをいだかせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠をいうものと解すべきであるが、右の明らかな証拠であるかどうかは、もし当の証拠が確定判決を下した裁判所の審理中に提出されていたとするならば、はたしてその確定判決においてなされたような事実認定に到達したであろうかどうかという観点から、当の証拠と他の全証拠と総合的に評価して判断すべきであり、コの判断に際しても、再審開始のためには確定判決における事実認定につき合理的な疑いを生ぜしめれば足りるという意味において、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判における鉄則が適用される」と判示しています。

また財田川事件・最高裁決定(最決昭和51年10 月12日刑集30巻9号1673頁)は、さらに踏み込んで「疑わしきは被告人の利益に」原則を「具体的に適用するにあたっては、確定判決が認定した犯罪事実の不存在が確実であるとの心証を得ることを必要とするものではなく、確定判決における事実認定の正当性についての疑いが合理的な理由に基づくものであることを必要とし、かつ、これをもって足りると解すべきであるから、犯罪の証明が十分でないことが明らかになった場合にも右の原則があてはまる」と判示しています。


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無罪の立証は不要です

再審の請求人は、新規性と明白性のある証拠を提出しなければなりませんが、無実であることの証拠を提出して無罪であることを証明することまで必要ありません。

前の証拠 (旧証拠)と新たに提出した証拠 (新証拠)とを併せ検討し、新旧証拠を総合的に評価したとき、「疑わしきは被告人の利益に」の鉄則に従い、確定判決の事実認定には合理的な疑いがあると裁判所に思わせればいいのです。つまり、「新しい証拠を考慮すると、確定判決の判断には疑問があるなあ」と思わせれば良いのです。

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早急に再審法の整備を

再審請求の手続を進めていくと、再審のやり方が裁判所(裁判官)の考え方次第で大きく異なっている現実を痛感することと思います。

現在の再審法は刑事訴訟法に19の条文しかなく、審理のやり方、証拠開示等が明確に規定されていません。そのため、裁判所(裁判官)の意向に大きく左右され、裁判官の裁量次第で再審請求審の審理に著しい格差が生じており、再審格差という事態が生じているのです。

しかも、裁判所が再審開始決定を出しても、面子のためでしょうか、検察官が不服申立をするので、冤罪被害者の救済がさらに遅くなっている現実があります。「無辜の救済」を理念とし、利益再審のみを認めている現行の再審法を考慮するなら、検察官の不服申立は認められるべきではありません。検察官の不服申立等は、冤罪被害者の速やかな救済を趣旨とする再審制度の理念が踏みにじられていると言わざるを得ません。

こうした点を改善し、適正手続の保障を実現して冤罪被害者を早急に救済するために、現在の再審制度に関する条文を直ちに改正して再審法を整備し、無辜の救済を速やかに実現していく必要があるのです。

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